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清泉メッセージ

201603.31

No87「高校卒業式・謝辞」

IMG_7290.JPGいまだ寒さが残る中にも、少しずつ柔らかい光が差し込み、厳しい冬を耐え抜いた草木を励ましております。同じく冬を耐え抜いた私たちにもその恩恵は感じることができます。そのような中、私たちは、この胸が一杯になるほど清々しい日に旅立ちを迎えます。本日は私たち、第六十六期卒業生のためにこのような式典を上げていただき、誠にありがとうございます。またご多忙の中ご出席くださいましたご来賓の皆様、校長先生はじめ諸先生方、保護者の皆様には心より感謝申し上げます。

三年間の高校生活におきましては、カトリックの精神のもとに学問に励み、多くの貴重な体験をいたしました。カトリック教徒作家である遠藤周作は、「日本人と基督教」を人生のテーマとして文学の世界に身を置きました。日本人であることは、ただ国籍を有することではない―。彼は西欧と異なる基督教観や、留学した際の差別等により自身の肌の色に悩み、病に身を窶( やつ)します。しかし遠藤はこう語るのです。「神は日本人に、日本人としての十字架をあたえられたに違いないのですから」。私たち清泉生は、基督の精神を学ぶことで、これから歩む人生に待ち受ける苦難を神様が与えてくださったものであると知ることができました。そしてこの清泉で、神様は辛い状況を分かち合ってくれる基督の存在を知るきっかけと、共に苦しみ、励み、喜び合える友人たちとの出会いを与えてくださいました。清泉祭や合唱コンクールのような行事では、ぶつかり、思いをうまく言葉にできない歯がゆさを噛みしめました。ですが、そうした状況から私を引き上げ、同じ歩幅で少しずつ確実に歩み、最後は喜びを分かち合ってくれたのは、紛れもない、友人たちです。感謝してもしきれません。

在校生の皆さん。これまで私たち六十六期生のもとに、委員会や部活動での活動を支えてくださりありがとうございました。どんなことでも、皆さんのご協力がなければ成し遂げることはできませんでした。これからは皆さんに様々な課題や試練が待ち受けているでしょう。その度に多くの人に支えられている事を思い出せば、乗り越えられない事はありません。次年度からの皆さんのご活躍を見ることができず、残念です。しかし、皆さんが清泉生であることの誇りや、清泉の文化を引き継いでいってくださる事を確信しております。

先生、いかなる時でもサポートしてくださりありがとうございました。学習の面のみならず、これから社会へ羽ばたいていく私たちに、時には厳しいご指導をくださいました。そのお蔭で、学校は社会の縮図であると、私は実感することができたのです。事務の先生方にも、私たちが学ぶのに心地の良い環境を作っていただき、ありがとうございました。

小林秀雄と岡潔の対談である『人間の建設』には、数学者である岡潔がこのように語る場面があります。「世界の知力が低下すると暗黒時代になる。暗黒時代になると物の本当の良さが分からなくなる。真善美を問題にしようとしてもできないからすぐ実社会と結びつけて考える。それしか出来ないからそれをするようになる」。学問は役に立たないことはありません。数学は思想を創り、科学は世界を動かし、文学は人を豊かにし、芸術は歴史を紡いできました。これら全ての礎である学問は、皮膚の下で脈打つ血管のように、私たちの倫理観や道徳観の下を伝わっていきます。私たちは、ここ長野清泉で、先生方から世界の平和、この国の将来を担うようご指導いただいてまいりました。そうして春を迎える準備が整い、卒業を目前にした時には、今までの思い出がより一層溢れてきます。入学したてで少し緊張して教室に入った日、友人と他愛もないけれど楽しく会話をした、今はただ懐かしいあの日々…。このように毎日を送ることができたのは、保護者の皆様の支えがあってこそです。卒業してしばらくはお弁当のあの味に恋しさも覚えるでしょう。また、私にとって母が叱ってくれたことに、一つとして私の為にならない事はございません。幼いが故に言ってしまった我が儘も、ぶつけてしまった怒りや悲しみも、受けとめてくれたことを感謝したいと思います。卒業生一同、この思いは同じであると存じます。これからも変わらぬご鞭撻を、どうぞよろしくお願いします。

最後になりましたが、本日はお忙しい中ご臨席いただきましたご来賓の皆様には再度お礼申し上げます。

謝辞を終えるにあたり、今日に至るまでのご指導、ご協力、そしてどんな時でも神様が愛してくださること、この三つを忘れることなく、他の人の糧となれるよう不断の努力をして参ることをここに誓い、六十六期生の謝辞とさせていただきます。

二〇一六年 三月五日
六十六期生卒業生代表

(2016年3月5日、高校卒業式、卒業生代表、謝辞より。)

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