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校長講話

201510.28

校長講話_34「一冊の本」

115poster4c.jpg 昨日から読書週間が始まりました。今朝は本にまつわる話をします。8月のある日、知り合いの本屋さんから一つの依頼をされました。その本屋のお客として、「お勧めの一冊」を選び、その推薦文を書いてほしい、ということでした。お客さんたちの推薦図書のコーナーを作り、そこに推薦文も添えるというのです。

 私は、その本屋さんには度々行きますので、喜んで協力させてもらいました。推薦した本は、批評家、小林秀雄の『学生との対話』という本です。この本は長野清泉の生徒にも是非読んでほしいと思い、以前図書委員会の推薦図書に推薦したことがあり、図書館に入っています。小林秀雄が大学生を相手に講義をする。その後、学生が質問し、小林がそれに答える。その質疑応答の部分を本にしたものです。一箇所だけ拾って読んでみます。

 学生がこんな質問をします。「先生は、学問とは知る喜びである、道徳とは楽しいものであると言われましたが、私には苦しいことのほうが多いのではないかと思えます。いかがでしょうか。」それに対して小林秀雄は次のように答えます。「喜びといっても、苦しくない喜びなんてありませんよ。学問をする人はそれを知っています。嬉しい嬉しいで、学問をしている人などいません。困難があるから、面白いのです。やさしいことはすぐつまらなくなります。そういうふうに人間の精神はできているんです。子供の喜びとは違うのです。喜びというものは、あなたの心の中から湧き上るのです。僕が与えることのできるものではない。学問が喜びであるか、苦しみであるか、というような質問は、質問自体がおかしい。それはあなたの意思次第です。自分を信ずることで解決するのです。」この本は何度でも読み返したくなる味わい深い本です。

 さて、嬉しいことが一つありました。その本屋さんに推薦図書のコーナーが出来て、しばらくして、行ってみました。私の推薦した本が売れたかどうか、気になったからです。せっかく、出版社から何冊も取り寄せて、積み上げてもらったのだから、売れなければ、申し訳ないと思いました。お店の人に、「売れましたか。」と尋ねると、「一番最初に売れた本は、先生が推薦してくれた本です。素敵な本を紹介してくれて、ありがとうございました。」と言われました。とても嬉しかったです。

 この読書週間で、皆さんに、素敵な本との出会いがあることを願っています。

(10月28日、放送朝礼より。写真出典:http://www.dokusyo.or.jp/)

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