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校長講話

201408.27

校長講話_7「吉野弘『夕焼け』」

111IMG_7048.JPG いよいよ、合唱コンクールが近付いてきました。この頃はあまり歌われなくなりましたが、以前の合唱コンクールではクラスの自由曲で、『雪の日に』という曲がよく歌われていました。私はその曲が好きでした。作詞は詩人の吉野弘です。吉野弘、牛丼で有名な吉野家の「吉野」に、名前はヒロシ。一字の漢字で、左側に漢字の弓、右側にカタカナの「ム」です。今年の1月15日に87歳で亡くなりました。

 暦の上では秋になり、吹く風もめっきり秋らしくなり、読書の秋になりましたので今日は吉野弘の詩について少しお話しします。彼には有名な詩が幾つもあります。結婚式のスピーチでしばしば引用される、結婚する二人に送る「祝婚歌」。「シュク」は「お祝い」の「祝」。「コン」は結婚の「婚」。また、英語を習い始めた少年が、”I was born.”という表現の、受身形であることに気づき、生命の不思議さを考える”I was born.”という詩。

 今日は数ある吉野弘の詩の中で「夕焼け」という詩を紹介します。以前、中学の教科書に載っていましたが、今はどうでしょうか。どこに「夕焼け」が出てくるかに気を留めてみて下さい。では、お聞きください。

<いつものことだが
電車は満員だった。
そして

いつものことだが
若者と娘が腰をおろし
としよりが立っていた。
うつむいていた娘が立って
としよりに席をゆずった。
そそくさととしよりが坐った。
礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。
娘は坐った。
別のとしよりが娘の前に
横合いから押されてきた。
娘はうつむいた。
しかし
又立って
席を
そのとしよりにゆずった。
としよりは次の駅で礼を言って降りた。
娘は坐った。
二度あることは と言う通り
別のとしよりが娘の前に
押し出された。
可哀想に
娘はうつむいて
そして今度は席を立たなかった。
次の駅も
次の駅も
下唇をキュッと噛んで
身体をこわらばせてー。
僕は電車を降りた。
固くなってうつむいて
娘はどこまで行ったろう。
やさしい心の持ち主は
いつでもどこでも
われにもあらず受難者となる。
何故って
やさしい心の持ち主は
他人のつらさを自分のつらさのように
感じるから。
やさしい心に責められながら
娘はどこまでゆけるだろう。
下唇を噛んで
つらい気持ちで
美しい夕焼けも見ないで。>

 吉野弘の「夕焼け」という詩です。読書の秋、機会があったら、吉野弘のそのほかの詩も読んでみて下さい。

 以上で私の話を終わります。

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