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清泉メッセージ

201309.17

No15「今のいのちを精一杯生きること」

100_20130917.JPG今日は、皆さんに、私の小さな経験を語りたいと思います。
最近、私の住まいのベランダに蜂が巣をつくりはじめました。最初は1匹だったのが今では巣も大きくなり10匹に増えました。私はこのまま蜂が増えると家族に危険だと思い、巣を駆除することにしました。ところが、いったん駆除すると心に決めると、蜂がかわいそうに思われてきました。蜂とて人間に危害を与えようとしてそこにいるわけではありません。かたときも巣から離れることなく巣に覆い被さるかのようにして、巣の中の幼虫を必死に守っています。その姿は人間が家族を守る姿と何ら変わらないように見えました。また、蜂は私たちにとって非常にたくさんの益をもたらしてくれます。蜂が花粉を運んでくれるおかげで、私たちは美しい花々を楽しむことができ、また蜂蜜を味わうことができるのです。蜂のいない世界を私たちは想像することができません。

私はできればこの蜂の巣をなんとか残してやりたいと思うのですが、まだいい方法が見つかっていません。かといってそのまま見過ごすこともできない状態です。おそらくは近いうちに駆除することになるでしょう。

この出来事は私に自分と生き物の関わりについて考える機会を与えてくれました。思うに、私が生きるためになんと多くの生き物を犠牲にしているのか。毎日の食事がそれを端的に表しています。いのちを食らい、そのいのちを受け継ぐ。私は生きていく限り、他の生き物を食らい続けていかねばならない身なのです。生きるということは、ある意味、殺生をする哀しみや痛みを伴うことなのだと思いました。

では、このように多くの生き物のいのちをいただかずには生きていけない私はどうすればいいのでしょうか。それは、心から「有り難い、ありがとう」と感謝し、今のいのちを精一杯生きることだと思いました。何十年、何百年、何千年という長い間親から子へと受け継がれてきたいのちの終着点になった私。たくさんのいのちが私をはぐくんでくれているのです。このありえないような出来事に対して、「いたみいります」と感謝したい。そして、今自分に与えられているいのちを、いのちに向けて精一杯使っていきたいと思いました。

最後にみなさんに吉野弘さんの詩「生命は」をお送りしたいと思います。

<生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命はすべて
そのなかに欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ
世界は多分
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思うことさえも許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?
花が咲いている
すぐ近くまで
虻の姿をした他者が
光をまとって飛んできている
私も あるとき
誰かのための虻だったろう
あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない>

これで終わります。
   (本文と写真は関係がありません。)

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