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清泉日記

201209.20

No12「放送朝礼講話よりイギリスで経験した東日本大震災」

以下の画像は、2011年3月11日のイギリスBBCのHP上のニュースです。       (http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-pacific-12709598)

 ところで、この当日、イギリスの現地の学校で教員をされておられ、この4月から当校で教鞭を執っておられるK先生が、先日の放送朝礼の講話をされました。今回はその講話を全文ご紹介します。<担当:広報室_N>

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 今朝はこの東日本大震災について、私が英国で経験したことをお話したいと思います。
 あの日、確か金曜日の朝だったと記憶しておりますが、私はロンドンの自宅で、当時の職場であるN学校に出勤するための準備をしながら、いつものように、いわば英国のNHKとでも言うべきBBC放送のニュースを観るために、テレビのスイッチを入れました。
 まず初めに目に入ってきた映像は、大きな波が田んぼをどんどん遡っていくものでした。初めのうちは、「なんで朝からドキュメンタリー番組なんか放映しているのだろう」と、そう思いながら、目を凝らしてずっと眺めていました。しかし、よくよく映像を見ていると片隅にNHKとあり、しかもライブとあるではないですか。ライブとは生中継という意味で、その瞬間、私は自分の祖国で何かとてつもない大災害が起こっていることを直感したのです。その後、しばらくの間、その場に立ちすくみながら映像を見つめていて、やっと何が起こったのかが理解できました。そう、それはまさしく東北地方の太平洋沖で巨大な地震が発生し、ものすごい大津波が東北地方の太平洋沿岸各地を襲っている、まさにその映像だったのです。私はその時、自分の体から冷や汗が流れ出ているのを感じました。その直後に、勤務先のN学校から大至急来るようにとの連絡がきました。学校に出勤してみると、てんやわんやの大混乱の真っただ中で、私自身もその日は大変な一日を過ごすことになりました。
 先ず児童生徒や日本から派遣されている先生方のご家族、出身地の自治体、教育委員会などへの状況確認、そして文部科学省や外務省、さらには在英大使館との連絡協議やメディアへの対応などです。その日は、先生方や事務の方をはじめ、ほとんどの人々が目を真っ赤にしながら懸命に働いていました。その時全員が感じていたことはおそらく、「地球の裏側にいて、何もできない辛さ・情けなさ・無力感」だったのではないかと思います。
 そうこうするうちに夕方になり、一本の電話。英国を代表するある大手の新聞社からでした。外信部の編集局長さんという立場の英国人男性からだったのですが、それは、「明日の新聞に日本の大震災についての特集をトップニュースで載せたい。ついては、被災地の学校や子どもたちの様子などについて、できる限り詳しい状況を教えてほしい。」、そういった内容でした。
 もうすでにその時までには、ある程度の状況が掴めていたので、学校として知りうる限りの情報をお伝えし、最後の挨拶のところで突然局長さんに、「こういった大災害の時、日本の人たちに何と声をかければよいのですか。」と尋ねられたのです。私はとっさに「がんばれ東北です。」と答えていました。編集局長さんは、その言葉を何度も何度も繰り返した後、最後にこう言って電話を切られました。「私たち英国人のほとんどが日本の状況について固唾をのんで見守っています。人間には決して避けることのできない未曾有の大災害ですが、そんな中にあっても、被災者の方々が整然と炊き出しの列に並ばれ、小さい子どもたちが、自分から進んで体の不自由な病人やお年寄りのために、自分の食べる分まで食料を分け与えている姿を見て、私たち英国人は大変に感動しています。その光景はまさしく、ほん少しの食料であっても、お互いに分かち合おうとする聖書の一場面そのものです。これは、日頃からごく自然に手を合わせて祈りを捧げる日本人の、素晴らしい信仰心そのものからくる姿なのでしょう。そういった感動的な姿を見て、私たち英国人ばかりでなく、世界中の人たちから、日本人は大きな同情と尊敬の念を受けることでしょう。」
 私たちはそれを聞きながら、皆大粒の涙をこぼしていました。それは国難ともいうべき大災害の中にあっても、ごく自然に、自分より身近な他人を思いやることのできる私たち日本人の姿に、世界中から尊敬の念が向けられていることを知ったからでした。学校では次の日、さっそく全校集会を開き、全校児童生徒やすべての先生方が、日本の復興のために、一人一人が全力で頑張っていこう、一人一人がそれぞれの十字架を背負い、日の丸を背負いながら頑張っていこう、と決意したのです。
 私は、長野清泉の生徒のみなさんには、今回の大震災の際、日本人が世界中からそういった目で見られていたことを、是非知っておいてほしいという思いから、このお話をしました。みなさんには、将来、一人一人が自分なりのやり方で、世界中から頂いた多くの厚意に対して、恩返しができるような人間になれるよう、精一杯頑張っていってほしいと思います。

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