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清泉メッセージ

201609.09

No106「高校説明会・卒業生講話『長野清泉の楽しき思い出』その1」

DSC02415.JPG本日は長野清泉での思い出を振り返りつつ大学生活、さらには現在の研究生活についてお話しさせていただこうと思います。

私の高校時代の思い出は、長野清泉でしか味わえないことを多く経験できたこと、そして私の学びたいという欲求に付き合ってくださる先生方に出会えたことです。

長野清泉独自の行事は多くありますが、その中でも特に宗教倫理の授業、イギリス語学研修などが思い出深く残っています。当時私はキリスト教に関する知識はあまりありませんでしたが、宗教倫理の授業は初心者でも興味深い内容でしたし、とても楽しく学べました。イギリス語学研修では初めての海外ということもあり、慣れない飛行機、生活習慣に苦労もしましたが、初めて見る景色、文化に感動し、現地の学生と交流を深められたことは非常に貴重な体験でした。また、相手の英語が聞き取れないこと、伝えたいことが表現できないもどかしさが悔しく、もっと英語を学びたいと思うきっかけになりました。

私は長野清泉入学時から生物系の研究をするために大学進学をしたいと考えていました。中学校までの授業で生物学に興味を持ち、自然や動物に関するテレビ番組や図鑑を見ることが好きだったからです。今振り返ると高校3年間は間違いなく人生で最も勉強した期間であったと思います。四六時中机に向かっていた記憶しかありませんが、それがつらくなかったのは、文句を言わず支えてくれた両親と、時間を忘れて勉強に付き合ってくださった長野清泉の先生がいらっしゃったからです。私は志望校を国立理系に絞っていたので、受験科目も多く、授業を取っていない科目についても勉強しなければなりませんでしたが、放課後に時間を作って教えてくださったり、どういった大学を受験すればよいのか真剣に相談に乗ってくださったのが長野清泉の先生方でした。
 
少し強めの表現をしますが、全国の高校生は似たような教科書を使ってほとんど同じ内容の勉強をします。であるならば、私はその学びを深めてくれる環境で3年間を過ごすべきだと思います。私が濃い3年間を過ごせたように、皆さんにもいろんなことに真剣に取り組んだと思えるような3年間を過ごしてほしいです。

ではここから私の大学と大学院生活について、簡単にお話しさせていただきたいと思います。大学では長野を離れ、東北仙台で4年間を過ごしました。東北大学の授業は難しく、ついていくのも一苦労でしたが、いろんな学科のある総合大学で、理系、文系様々な分野の最新を専門的に学べることは大きな収穫となりました。また、全国各地から集まる友人たちと様々な話をするのは有意義な時間でした。野球部でマネージャーをし、夏の大会では北海道や、九州にも行きました。

学科の実習では、山に登って植物を採取し解析を行ったり、海がすぐ目の前の研究施設に10日間宿泊し、海産生物の研究もしました。大学4年生には研究室に配属されて、私はマウスを使って皮膚の再生研究をしていました。多くの本や論文を読み、たくさん勉強しましたが、成果がやっと出たのは卒業間近でした。ほしかった結果が出たときは顕微鏡を覗きながら涙したことを覚えています。卒業論文が仕上がらなくて、研究室で徹夜したことも今となっては良い思い出です。

そして今私は、東京で原因不明の病気の発症がなぜ起こるのか研究しています。研究は地味でつらいことのほうが多いです。まず、研究のテーマを決めようと思った時には、世界中に同じ研究をしている人がいないかどうか、すでに答えが分かっていないかどうかを調べるために、本や論文をたくさん読みます。また、どういった方法で実験をすれば答えが見つかるのか調べます。いざ、テーマや方法が決まっても結果はすぐに出ません。ちょっと薬をかけすぎただろうか、うまく見えないなあなどと顕微鏡の前で頭を悩ませます。そしてまた本や論文を読んで改善点を見つけます。時間もとにかくかかります。それを繰り返しながら、ある日突然きれいな結果が出たときには、言葉にできないほどの感動が訪れます。今までの苦労を一気に忘れて、涙が出ます。この幸せの時間があるからこそ、研究はやめられません。しかし、翌日にはまた勉強が始まります。研究は教科書に書かれていないことを新しく発見する仕事です。そしてその醍醐味は世界中の誰も知らないことを私が一番に知れるところです。私はまだまだ学生で知らないことがとても多いです。大変なことも多いですが、驚きがほしくて毎日顕微鏡に向かうことができます。幸せな日々を送っています。

私が研究を続けてきて大切に思うことが2つあります。それは、知識を得ることと、総合的に考えられる力です。初めて目にする難しい本を読んだとき、知識がなければ何が分からないのかすらわかりません。知識があるからこそ疑問を持つことができるのです。そして、疑問を持った瞬間に研究が始まるのです。また、私が研究している自然科学は何か一つをじっくり見ればよいというものではありません。例えば、熱帯魚の模様はイギリスの数学者が発見した数式に従って作られることが分かっています。これには生物学の知識だけでなく、数学、物理学の知識が必要になります。また、アリの集団をよく観察すると、働きアリ、女王アリなどと役割分担をして一つの集団をつくりあげており、人間の社会構造によく似た生活をしており、アリの研究には社会学の知識も役に立つかもしれません。

私が最後に皆さんに伝えたいことは、すべての学びが自分の知識になるということです。知識とは必ずしも学問においてのみ言えることではありません。新しい何か、新しい自分、新しくやりたいことを見つけるには、その前に学びがなければならないのです。私が研究に出会えたように若いうちにいろんなものを見て、学んで、皆さんの素敵な将来を見つけてください。ご清聴ありがとうございました。

(文理特進コース2011年卒業、東北大学理学部生物学科卒、現・東京医科歯科大学修士課程2年生。2016年9月3日、第3回高校説明会、卒業生講話より。)

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