長野清泉女学院中学・高等学校 | ひとり一人、花を咲かせる6年間

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校長講話

校長講話_NO.166「ラストページまで駆け抜けて」

2020年12月14日

 今年の読書週間の標語は、「ラストページまで駆け抜けて」ですが、今朝は最後のページまで辿り着けなかった体験をお話します。

 先週お話ししたカフカの小説に、『城』という長編があります。これまでにも何回か読み返した大好きな小説の一つです。しかし、この『城』を最初に読んだ時、途中で読むのをやめてしまいました。一度読み始めた本はとにかく最後まで読み通すことにしていますので、最後まで読まなかった本はそう多くはありません。カフカの『城』はそんな本の一冊です。

 初めて『城』を手にしたのはもう数十年も前のことです。書店で目にした文庫本、仮に「いろは文庫」としておきます。その「いろは文庫」を買って読み始めました。ところが、物語の内容がちっとも頭に入りません。翻訳なので日本語に訳されているのですが、意味がとれないのです。しばらく読んでは、わからなくなり前に戻り読み直す、そんなことを繰り返すうちに、読み進むのが苦痛になり読むのをやめてしまったのでした。そして、カフカの小説は自分には理解できないと勝手に決めてしまいました。

 それから、しばらく時が流れます。ある時、本屋にいて、ふとカフカの『城』の別の文庫本を手に取ってみました。仮に「ほへと文庫」としておきます。立ち読みを始めたのですが、驚いたことにどんどん読み進められるのです。物語の筋もすっきり頭に入ってきます。その文庫を買い、家で読み始め、今度はあっという間に読み切りました。まさにラストページまで駆け抜けたのでした。今まで読んだことのない種類の小説で、不思議な魅力を強く感じました。

 「いろは文庫」と「ほへと文庫」の翻訳が全く違っていたのです。翻訳によってこうも違うのかということに気付かされました。複数翻訳が出ているものは読み比べて買わなければいけないな、ということを心に刻みました。しかし、「言うは易く、行うは難し」で最近もどうも変だと思う翻訳にぶつかってしまいました。これから別の翻訳で読んでみようと思っているところです。こういう遠回りをするようなことも読書の楽しみの一つかもしれません。今朝は私のささやかな読書体験をお話ししました。

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工事の囲いもとれて完成に近づいた美術館(12月8日撮影)

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